ある輸送会社に、どの路線が高くつくのかと尋ねれば、地図の話より先に時計の話が返ってくる。調達側の問いは順序が逆だ。どれだけ遠いのか、何キロか、1キロいくらか。
運賃見積のなかで、距離はいちばん安く考えを変えられる項目である。走行費であり、その大半は燃料とタイヤで、おおよそ比例する。倍の距離なら軽油もおよそ倍だ。納品時間枠はまるで違う。それは車両の1日のうちの一区画を、時刻を固定したまま予約する行為であり、その1日を他の仕事といくつ分け合えるかを決めてしまう。
お金はそこにある。キロ数にはない。
時間枠は実際に何を予約しているのか
9時から10時のあいだに届けてほしいと言われたとき、輸送側が値段をつけている対象は到着ではない。予約であり、その予約は時間枠そのものより長い。
- そこまでの走行時間。平均ではなく遅い側の想定で組む必要がある
- 時間枠そのもの。9時5分に着いても、9時5分に車が空くわけではない
- 現場での作業時間。1停車あたりの固定時間に、パレットやケース数に応じた変動時間が乗る
- その後に残る当日の時間。もう1件こなせるだけ残っていなければ価値はない
標準的な配車計算は荷降ろし時間をまさにその形で扱う。1停車あたりの固定時間に1ケースあたりの単価を足すもので、固定部分は作業しやすい現場で約10分、難しい現場で約25分になる。そして2便目が可能なのは当日にまだ2時間以上残っているときだけとみなす。この最後の規則が、費用の話を一行で言い切っている。車が90分しか残さずに戻る時間枠は、1日を丸ごと使い切った。3時間を残して戻る時間枠は、半日を使ったにすぎない。
この計算のどこにも距離の話は出てこない。
同じ顧客、五通りの時間枠
これをそのまま測ったタイの研究がある。変わってよいものが一つに限られていたため、めずらしく条件がきれいだ。
タイ東部沿海の自動車部品工場が17社へ配送している。いずれも工場から約12キロの範囲内にある。総需要は2,710トレー。車両は1便500トレーなので、算術上の下限は6便である。時間枠が存在する理由も書き留めておきたい。顧客側が生産量を増やし、資材を置く場所がなくなったため、1日を小分けにして決まった時刻に届けることを求めた。その時間枠は顧客の保管費であり、工場の運賃へ移されたものだ。
研究者は同じ17社、同じ需要、同じ地図を、同じ計画手法で五回通した。変えたのは時間枠の組だけである。結果はこうなった。
| 時間枠の組 | 必要な便数 | 距離 | 平均積載率 | 延着の累計 |
|---|---|---|---|---|
| 第1組、元の時間枠 | 7 | 130.56キロ | 77.4% | 7時間01分 |
| 第2組 | 6 | 116.66キロ | 90.3% | 0時間05分 |
| 第3組 | 6 | 116.54キロ | 90.3% | 4時間11分 |
| 第4組 | 7 | 136.88キロ | 77.4% | 0時間22分 |
| 第5組 | 8 | 141.73キロ | 67.8% | 0時間22分 |
真ん中の二列を並べて読む。距離は五組のあいだで21.6%動く。便数は3分の1動く。積載量の算術が求める6便から、8便までである。同じ荷物、同じ顧客、同じ道路、同じ計画担当者。時間枠だけで、この事業所が理論上の最小値で走るのか、それより3分の1多く走るのかが決まっていた。
積載率の列が理由を語る。6便なら1便平均452トレー、上限は500である。8便なら339トレーだ。時間枠の組は車をよけいに走らせたというより、満載にならないまま出発させていた。そして満たない1便の費用は、満載の1便とほとんど変わらない。
かたまった時間枠は容量の問題であり、距離の問題ではない
元の時間枠の組がいちばん見る価値がある。現実の顧客が実際に求めてくる形そのものだからだ。時間枠は平均33分、最も狭いものが10分、最も広いものが50分で、四つの帯に落ちていた。
| 時間帯 | 顧客数 | その帯で求められたトレー数 |
|---|---|---|
| 8時15分から8時30分 | 2 | 280 |
| 9時45分から10時15分 | 5 | 830 |
| 11時30分から12時30分 | 5 | 620 |
| 14時30分から15時30分 | 5 | 980 |
9時45分の帯を見てほしい。5社が同じ30分のうちに受け取りたいと言い、合計で830トレーを求めている。車両1台は500トレーである。どれほど巧みに経路を組んでも解けない。これは経路の問題ではないからだ。その5社は互いに近く、最も離れた2社でも直線でおよそ2.9キロしかない。距離は最初から障害ではなかった。同じ30分のあいだに2台がその5つの門に立っていなければならない。830は500より大きいからだ。
これが一般則であり、はっきり言うに値する。納品時間枠の組は、同じ時刻に何台が存在しなければならないかという下限を決めてしまう。 その下限は車両台数であり、誰かが地図を開く前にすでに固定されている。短い路線なのに運賃が高く見える理由を知りたければ、いちばん混む1時間に顧客が求めるトレー数を数え、1台の積載量で割ればよい。同じ論理が通常の週にどれだけの車両を確約しておくべきかも決めている。
最短の経路は、あなたの時間枠を守る経路ではない
同じ研究は五組の時間枠に対して四つの計画手法を走らせた。うち三つは違うやり方で距離を追う。四つめの最早納期法は納期の順に並べるだけで、出てきた距離はそのまま受け入れる。
| 手法 | 平均距離 | 延着の累計 |
|---|---|---|
| 最遠最近隣法、最短 | 121.94キロ | 29時間12分 |
| 最近隣法 | 125.91キロ | 17時間14分 |
| 最早納期法 | 128.47キロ | 2時間24分 |
| セービング法 | 135.83キロ | 32時間33分 |
地図の上で最短の計画は、1日の作業のなかで顧客の時間枠を合計29時間以上外していた。納期順に並べ替えると、距離は5.36%増え、その数字は2時間24分に縮んだ。
そのうえで研究者は実地に適用した。座標ではなく実測の道路距離を使い、結果は222.79キロ、時間枠を超えた顧客は1社、しかも9分だけであった。買い手にとって重要なのは、彼らが最後に報告した数字である。その工場が外部の手配車両へ渡さざるをえなかった配送の割合は、59.99%から29.41%へ下がった。
仕組みを一文で言えばこうだ。守れない時間枠は、自社の輸送力を他社の請求書に変えてしまう。 その工場の仕事の6割が手配車へ流れていたのは、車が足りなかったからではない。計画が自社の車を正しい門へ正しい分に届けられなかったからだ。そしてこれを直すのに、地理が何か変わる必要はなかった。
請求書が実際に数えているもの
時間枠が高いのが便数のせいなら、請求額はキロ数ではなく便数について動くはずである。6か月分のデータを取ったタイの輸送事業者という二つめの事例が、まさにそれを示す。
この事業者はもともと1便で1社しか担当していなかった。顧客を同じ便にまとめたあとはこうなった。
| 改善前 | 改善後 | 変化 | |
|---|---|---|---|
| 月あたり便数 | 87 | 49 | −43.68% |
| 月あたり走行キロ | 5,810.75 | 4,279.50 | −26.35% |
| 月あたり輸送費 | 162,500バーツ | 91,500バーツ | −43.69% |
費用は43.69%下がり、便数は43.68%下がった。距離は26.35%しか下がっていない。1便あたり費用を出せば理由は明白である。改善前が1,867.82バーツ、改善後が1,867.35バーツ。まったく動いていない。月71,000バーツの削減はすべて、便を38本減らしたことから来ており、キロ数は付随的なものだった。
一方で1キロあたり費用は改善したように見え、27.97バーツから21.38バーツになった。これは節約ではなく算術である。動いていない1便あたりの費用が、より多くのキロ数に薄まっただけだ。まとめた1便は87.3キロを走り、1社だけの1便は66.8キロを走っていた。この事業所を1キロあたりバーツで報告した者は、24%の改善を発表し、44%のほうを見落とすことになる。
だから時間枠を狭めれば高くなると言われたときの正直な言い換えは、「よけいに走ることになる」ではない。「同じ1便に入るあなたの停車地が減る、そして我々が売っているのは便だ」である。
時間枠の半分はあなた自身の門で消える
時間枠のもう一方の端は、調達が忘れやすい側だ。請求書に出てこないからである。
チュラーロンコーン大学の研究者が、タイのあるメーカーで最も車両の出入りが多い倉庫を、運転者が積込待ちの列に入った時点から車両が出るまで計測した。平均は139分。55%の車が1時間以上そこにいた。実際の積込は平ボディ車で23.9分、コンテナ車で44.3分なので、139分の大半は積込でも積込地点での待ちでもない。1回の入場に伴うそれ以外のすべてである。
そこで四つの対策を検証した。待ち行列に効いた対策は見事に効き、積込地点での待ちを平ボディ車で14.9分から1.1分、コンテナ車で21.7分から1.3分まで下げた。そして入場の合計時間は3%縮んだ。
これが有用で、少し気を落とさせる発見だ。バース側の能力を増やせば行列は消えるが、入場そのものは残る。出荷の門が車両の1日から2時間20分を取っていくなら、3時間先の顧客の時間枠は丸1日であり、先方と交渉して得たどんな時間枠もそれを変えない。受け入れ側にも対になる議論があり、待機時間料は同じ問題を輸送側から見たときの価格である。
どう使うか、順番に
1. 約束している時間枠をすべて一つの時計の上に置き、各時間帯の荷量を数える。 顧客の数ではなく積載量を数える。ある1時間に車1台分を超える荷があるなら、その時間に2台目を縛りつけたことになり、誰に言われていなくてもその費用を払っている。
2. 顧客ごとに目標時刻ではなく二つの数字をもらう。 物理的に受け取れる最も早い時刻と、受け入れられる最も遅い時刻。計画担当者が必要なのはこの二つである。「10時に届けてください」は幅ゼロの時間枠であり、そのように値付けされる。
3. 時間枠は顧客ごとの時刻ではなく少数のコードで表す。 終日、午前のみ、午後のみ、昼休み閉鎖。六つのコードでたいていの事業は収まる。得られるのは整理ではなく、コードは交渉できるのに、発注書に書かれた時刻は交渉できないということだ。
4. その時間枠が本物か確かめる。 先の工場では、顧客に保管場所がないから時間枠が存在した。それは本物の理由であり動かない。一方で、最後に設定した人がいるという以外に何の理由もない時間枠は山ほどあり、それは自社の書類のなかで遊んでいる輸送力である。
5. 争うのではなく値段をつける。 同じ路線について三通りの見積を輸送会社に頼む。固定30分の時間枠、2時間の時間枠、その日のいつでもよい場合。三つの差額が、これまで推し量ろうとしていた数字である。多くの買い手はそれを見たことがない。頼まないからだ。そして輸送会社の側から出すと、値段を上げに来たように見えてしまう。
6. 遠端で狭い時間枠を買う前に、自社の積込門を直す。 自社倉庫での2時間は、その日の反対側から消える2時間であり、しかも自分で握れる半分である。
7. 時間枠は平均ではなく遅い側で組む。 時間枠はある1回の走行ではなく時間の分布に対する約束であり、地図の答えと実際の戸口から戸口までの時間の差こそ、その約束が壊れる場所だ。
覚えておく価値のある一行
距離は走行費であり、おとなしくしている。納品時間枠は、指定された時刻における車両の1日の一区画を買い取り、その1日をいくつの停車地が分け合えるかを決める。
だからこそ、同じ12キロの範囲にいる同じ17社が、ある時間枠の組では6便を要し、別の組では8便を要した。誰も引っ越していない。動いたのは時計である。
